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【シドニアの騎士】はどんな話?ネタバレなし解説|絶望的な宇宙戦と妙に可愛いラブコメ感

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【シドニアの騎士】はどんな話?ネタバレなし解説|絶望的な宇宙戦と妙に可愛いラブコメ感

シドニアの騎士(1) (アフタヌーンコミックス)新装版 シドニアの騎士(1) (アフタヌーンコミックス)

『シドニアの騎士』は、正直に言えば、とっつきにくそうに見える漫画だと思う。
宇宙。未知の生命体。巨大な船。人型兵器。設定だけ並べると、かなり本格的なSFに見える。実際、その見た目は間違っていない。世界観も重いし、用語も独特だし、最初の数話だけなら「少し距離がある」と感じる人もいるはずだ。

 

でも、この漫画の面白さは、そこだけで終わらない。
むしろ読んでいると、これはSFの皮をかぶった、かなり特殊なラブコメでもあるのではないか、という感覚が強くなってくる。巨大ロボットものが少し苦手でも、硬派な宇宙戦だけを想像して構えてしまっても、意外とそこが入口ではない。谷風長道をめぐる人間関係や、少しずつ形を変えていく恋愛の気配、その妙なズレ方まで含めて、この漫画はかなり独特だ。

 

しかも、そのラブコメ感がただ軽い息抜きになっているわけでもない。
人類最後の船の中で、誰かを好きになること。誰かと繋がろうとすること。そもそも「人間らしさ」が揺らいでいる世界で、それでも一緒に生きようとすること。その感情があるから、この物語はただ冷たいSFにならない。
悪く言えば硬く見える漫画。けれど実際には、かなり感情で読める。

 

もちろん、宇宙戦の迫力は本物だ。
ガウナの不気味さ、衛人の高速機動、宇宙空間での戦闘の緊張感。そこはしっかり本格SFの顔をしている。けれど、読み進めるほど前に出てくるのは、「どう戦うか」だけではない。「誰と生きるか」「何を人間らしさと呼ぶのか」という話でもある。だから『シドニアの騎士』は、SF好きのための作品でありながら、SFだけでは括りきれない。

 

巨大ロボット漫画は少し合わないかもしれない、と思っている人にも、一度だけ読んでみてほしい。
その感覚ごと裏切ってくる可能性がかなり高い。硬質な宇宙SFとして始まり、気づけば妙に可笑しくて、妙に可愛くて、かなり切ない。そういう変な手触りを持った漫画だ。


【シドニアの騎士】はどんな話?ネタバレなしあらすじ

遠い未来。人類は、対話不能の異生物「ガウナ」に太陽系を破壊され、その一部が巨大な播種船「シドニア」に乗って宇宙を漂っている。シドニアの最下層で祖父と二人きりで育った少年・谷風長道は、祖父の死をきっかけに上層へ出て、そこで初めて「社会」と出会う。彼には常識がない。けれど、誰にも真似できない操縦の腕があった。シドニアの防衛兵器「衛人」の操縦士として選ばれた長道は、ガウナとの終わりの見えない戦いへ引き込まれていく。

 

この物語の入口は、かなり王道だ。
滅びかけた人類。最後の砦。訓練生。未知の敵。ここだけ見ると、硬派なロボットSFのように見える。けれど、長道がシドニアの中で出会う人たちとの距離感が、少しずつこの漫画の温度を変えていく。孤独だった少年が、ようやく他人と関わり始める。その不器用さがあるから、戦闘だけではない別の面白さが立ち上がる。

 

そして、この漫画は敵の怖さが本当に怖い。
ガウナはただ強いだけではなく、何を考えているのかも、どこまでが生物でどこからが別の何かなのかも、簡単には掴めない。その不透明さがずっと不安を残す。だから戦闘シーンは派手なのに、勝ってもすっきりしきらない。常に「次はどうなる」が残る。この緊張感が、物語全体を最後まで引っ張っていく。

 

一文で言えば、『シドニアの騎士』は、滅亡寸前の人類が巨大な宇宙船を舞台にガウナと戦いながら、生き延びることと、人間であることの意味を探っていく本格スペースSFだ。

続きが気になった方はこちら


基本情報

  • 作者:弐瓶勉
  • 掲載誌:月刊アフタヌーン
  • 巻数:全15巻完結
  • アニメ化:TVシリーズ第1期・第2期、劇場版あり
  • 受賞歴:第39回講談社漫画賞 一般部門、第47回星雲賞 コミック部門

全15巻という長さがかなりちょうどいい。
長編SFとしては長すぎず、でも短すぎもしない。世界観の説明、戦闘、人物関係、物語の核心まで、ちゃんと走り切るには十分な長さがある。その一方で、勢いが途切れるほど長くない。このまとまりの良さはかなり大きい。

 

また、『シドニアの騎士』は完結済みなので、谷風たちがどこへ行き着くのかを最後までまとめて追いやすい。しかもこの漫画は、巻数が進むほどラブコメっぽい妙な可笑しさと、SFとしての重さが同時に濃くなるので、一気読みとの相性もかなりいい。


作品の構造

世界観

シドニアという船そのものが、まず面白い。
ただ人が乗っているだけの避難船ではない。そこは、人類が生き延びるために変質した社会でもある。光合成できるよう改造された人間、クローン、第三の性を持つ者たち。人間が「生き残る」ために、どこまで自分を変えてきたのか。その答えが、シドニアの社会そのものに埋め込まれている。

 

だから、この漫画の怖さはガウナだけではない。
人類もまた、かなり極限まで変わってしまっている。けれど、それを異常と決めつけるだけでは済まない。そうしなければ生き残れなかったからだ。この「仕方なさ」と「それでも残る人間臭さ」が同居している感じが、とてもいい。

 

また、弐瓶勉の描く巨大建造物の感触も外せない。
シドニアの内部は広い。冷たい。無機質。それなのに、そこに人が暮らしている実感もある。広すぎる空間と、そこで営まれる日常。この落差が宇宙船という舞台に説得力を与えている。舞台そのものが一つの生き物みたいに見えてくる。

 

 

物語システム

戦闘の面白さを支えているのは、「衛人」という兵器の機動だ。
宇宙空間での慣性移動、加速、進路の取り方、接近と離脱。ロボットバトルなのに、どこか飛行戦のような緊張感がある。ただ殴り合うのではなく、どう距離を詰めるか、どう軌道を取るかがそのまま勝負になる。このスピード感がかなり気持ちいい。

 

ただ、それ以上に効いてくるのが「死」が近いことだ。
この漫画は、誰がいつ消えてもおかしくない緊張をかなり長く保っている。魅力的な人物だから生き残る、という安心感が薄い。だからこそ、日常パートの軽さや、少しずれた恋愛の空気が余計に沁みる。戦いの緊張と、日常の温度差。その落差がずっと効いている。

 

そして、ここでラブコメの妙な味が効いてくる。
谷風をめぐる関係性が、普通の三角関係や王道青春にそのまま乗らない。人間だけで閉じないし、感情の置き方も少しずれている。だからこそ、ロボットものとして構えていたところに、変な可愛さや可笑しさが差し込んでくる。このズレが『シドニアの騎士』をただの硬派SFにしない。

 

 

作品テーマ

『シドニアの騎士』がずっと問い続けているのは、「生き延びるために何を変えても、人はまだ人間なのか」ということだと思う。
社会の仕組みも、体のあり方も、恋愛の形も、全部が少しずつ変わっている。けれど、その中でも人は誰かを好きになり、仲間を失えば傷つき、守りたいもののために前へ出る。その姿があるから、この漫画は冷たいだけでは終わらない。

 

だから、これは単なる滅亡SFではない。
絶望の中で人類がどう適応したかを描く話でありながら、その適応の中にある「人間らしさ」もずっと見ている。科学や制度や兵器の話だけではなく、感情の持ち方や、他者との距離感まで含めて「生き延びる」を描いている。そこがかなり深い。

 

そして、読んでいくうちに見え方が変わる。
最初は宇宙戦の漫画に見えたものが、途中から少し変わる。人類の話であり、異種との関係の話であり、かなり特殊な恋愛の話にも見えてくる。このずれ方が面白い。『シドニアの騎士』は、ジャンルの顔が一つではない。


この作品が刺さる理由3つ

  • 本格SFなのに、意外なほど感情で読める
    用語や設定は硬派だが、実際に引っ張るのは人間関係の温度だ。谷風が誰とどう距離を縮めるのか、何に戸惑い、何を守ろうとするのか。その感情の流れがあるから、SFに慣れていなくても入りやすい。

 

  • 巨大ロボットものに見えて、かなり特殊なラブコメでもある
    宇宙戦の緊張感は本物なのに、読み味はそれだけではない。人ならざる存在まで含めた関係性が、妙に可愛くて、妙にずれていて、かなり忘れにくい。巨大ロボットものが少し苦手でも、ここはかなり入口になる。

 

  • ガウナ戦の絶望感がずっと薄まらない
    敵の不気味さが最後まで落ちにくい。何を考えているのかも掴みにくく、倒しても安心しきれない。そのせいで、勝敗そのものより「生き延びられるのか」が前に出る。戦闘の緊張感がかなり長く続く漫画だ。

向き不向き

合わない人

  • 最初から説明が親切でわかりやすい作品を読みたい人
  • 硬質なSFの見た目だけで苦手意識が強い人
  • 宇宙戦や巨大兵器の描写にまったく興味が持てない人

刺さる人

  • 絶望感のある本格SFを読みたい人
  • ただ硬いだけではない、感情のあるSFが好きな人
  • 巨大ロボットものは苦手でも、人間関係の妙なラブコメ感には惹かれる人
  • 人類の「最後の社会」がどうなるかを見届けたい人

まとめ

『シドニアの騎士』は、とっつきにくそうな顔をしている。
それはたしかだと思う。SF、宇宙船、未知の敵、独特な用語。入口だけ見れば、気軽に読む漫画には見えにくい。けれど、その見た目だけで通り過ぎるにはかなり惜しい。

 

本当に読んでいて残るのは、宇宙戦の迫力だけではない。
人類最後の船の中で、誰を好きになるのか。誰と生きるのか。そもそも何を人間らしさと呼ぶのか。その問いがずっと流れている。だからこれは、硬派SFでありながら、かなり特殊なラブコメでもある。
しかも、その「特殊さ」が思った以上に効く。妙に可愛い。妙に切ない。妙に忘れにくい。

 

巨大ロボット漫画が少し合わないかもしれない、と思っている人にも勧めやすいのは、そこだ。
戦闘の緊張感は本格的なのに、感情の読み味はかなり柔らかい。ガウナの恐ろしさ、衛人戦の速度、シドニア社会の異様さ。その全部があるのに、最後に残るのは人と人の距離の話でもある。

 

『シドニアの騎士』は、SFとして面白い。
でも、それだけでは足りない。
宇宙の絶望、人類の適応、そして少しずれたラブコメの気配まで含めて、ようやくこの漫画の面白さになる。
硬そうに見えて、実際にはかなり感情で読める。そこがこの作品のいちばんいい裏切り方だと思う。

 

 

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