【百万畳ラビリンス】面白い?漫画はどんな話かネタバレなし解説|夢みたいに怖くて、攻略がやめられない傑作
『百万畳ラビリンス』は、派手な漫画ではない。
大声で煽ってくるタイプでもないし、強烈なバトルや泣きの演出で押し切る作品でもない。けれど、読み始めると妙に離れにくい。静かなのに引力がある。気づくと、次の扉の先を見たくなっている。そういう種類の漫画だ。
こういう夢を見たことがある人は多いと思う。
知らない建物の中を歩いている夢。どこか怖い。けれど、怖いだけでは終わらない。あの角を曲がった先に何があるのか、階段を上ったら景色が変わるのか、少しだけ気になってしまう。『百万畳ラビリンス』の面白さは、かなりそこに近い。畳、廊下、階段、襖。見慣れているはずの風景が、少しだけ壊れていて、その壊れ方が妙に気になる。
しかも、この漫画は不気味さだけで読ませるわけではない。
礼香がこの空間を「ゲームのバグ」みたいに捉え始めてから、一気に味が変わる。ここはどう繋がっているのか。どの現象がルールで、どこからが綻びなのか。思いついたら試したくなる。試したらまた別の謎が出る。その繰り返しがやたらと気持ちいい。バグと聞くと普通は不便さや不快さを連想しやすいが、この漫画ではむしろ逆だ。綻びがあるから面白い。そこがかなりいい。
だから『百万畳ラビリンス』は、ただのSF迷宮ものではない。
夢っぽい不条理空間が好きな人、バックルーム的な怖さに惹かれる人、ゲーム的な攻略の気持ちよさが好きな人、その全部に引っかかる可能性がある。しかも全2巻。短い。なのに軽くない。こういう短巻数の異色作が好きな人には、かなり良い入口になると思う。
【百万畳ラビリンス】はどんな話?ネタバレなしあらすじ
主人公は、ゲーム会社でデバッグのアルバイトをしている礼香。
人付き合いが得意ではない彼女は、同居人の庸子とともに、ある日突然見知らぬ木造建築の中へ迷い込む。そこは、どこまで進んでも畳敷きの部屋や廊下や階段が続く、出口の見えない異常空間だった。
最初に強く出るのは、庸子の不安のほうだ。
こんな場所、普通は怖い。帰れないかもしれない。誰もいない。ずっとここかもしれない。けれど礼香は少し違う。戸惑いながらも、この世界を「攻略できるもの」として見始める。そこが面白い。混乱をただ恐怖として処理せず、ルールのある空間かもしれないと考える。その視点ひとつで、迷宮がホラーからアドベンチャーへ変わる。
そして話が進むほど、この迷宮はただの不思議空間ではなくなっていく。
扉の位置、部屋のつながり、バグのような現象、積み上がる違和感。礼香のゲーム的な思考が、その全部を少しずつ読み解いていく。だから『百万畳ラビリンス』は、迷い込んだ二人が助かるかどうかの話であると同時に、「この世界は何なのか」を見抜いていく話でもある。
一文で言えば、『百万畳ラビリンス』は、無限に続く木造迷宮に迷い込んだ二人の少女が、ゲームを攻略するような発想で世界の綻びを探し、謎そのものへ近づいていくSF迷宮漫画だ。
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基本情報
- 作者:たかみち
- 掲載誌:ヤングキングアワーズ
- 巻数:全2巻(上下巻)
- 完結状況:完結済み
- 受賞歴:マンガ大賞2016 第5位
- ジャンル:SF、ミステリー、アドベンチャー、迷宮もの
全2巻という短さは、この漫画のかなり大きな武器だ。
長く付き合うタイプではない。けれど、短いから軽いわけでもない。上下巻の中で、迷宮の不気味さ、攻略の気持ちよさ、世界の謎まできちんと走り切る。このまとまりのよさがあるから、読み終えたあとに「短かった」で終わりにくい。
むしろ、この作品は短いからこそ強い。
変に説明を引き延ばさない。もったいぶりすぎない。その代わり、違和感と発見が詰まっている。長編に入る気力がない時でも手を出しやすいし、それでいて「こういう漫画をもっと読みたい」に繋がりやすい。そこがかなりいい。
作品の構造
世界観
『百万畳ラビリンス』の強さは、まず舞台そのものにある。
木造建築。和室。階段。廊下。どこか古い旅館にも、学校にも見える。つまり、完全な異世界ではない。むしろ近い。見覚えがある。だから怖い。知らない怪物が出る怖さではなく、知っている空間が無限に続いてしまう怖さ。ここがかなり独特だ。
しかも、外を見れば青空がある。
明るい。閉塞感だけで押してこない。なのに出られない。このアンバランスさがいい。見た目はのどかなのに、状況だけが壊れている。だから不気味さがじわじわ効いてくる。
この「夢みたいな怖さ」があるから、ただのパズル漫画では終わらない。
空間の理屈を考える面白さはある。けれど、その前にまず空気がある。歩いているだけで少し不安になる感じ。こういう空間ものが好きな人には、かなり刺さると思う。
物語システム
礼香がデバッグ思考で動く、この一点がかなり効いている。
普通なら「どうやって脱出するか」に焦点が寄るところを、『百万畳ラビリンス』は「どういうルールで壊れているのか」を考え始める。ここが面白い。扉を試す。移動を試す。現象を観察する。仮説を立てる。外れたらまたやる。まるでゲームのバグ検証そのものだ。
しかもこの検証が、ただ理屈っぽいだけで終わらない。
「思いついたら試してみたい」という感覚がずっとあるからだ。読む側も、次はこれをやるのでは、と少し考えてしまう。上手いプレイを横で見ている時の気持ちよさに近い。ゲーム好きほど、この漫画の礼香の見方にしっくり来ると思う。
ここが、『百万畳ラビリンス』を他の記事にも繋げやすくしている部分でもある。
迷宮ものが好きな人だけでなく、ゲーム脳で世界を解く漫画が好きな人にも合う。つまり、空間の不気味さに惹かれて入ってもいいし、攻略の面白さで入ってもいい。入口が一つではないのが強い。
作品テーマ
この漫画がずっと扱っているのは、たぶん「適応」と「好奇心」だ。
未知の空間は、本来かなり怖い。けれど礼香は、その怖さをゼロにはしないまま、理解したい気持ちで前へ進む。ここがいい。恐怖に勝つ、というより、恐怖の中に面白さを見つけてしまう。その姿勢が、物語全体の温度を決めている。
だから『百万畳ラビリンス』は、閉じ込められる話なのに、読後感が暗すぎない。
むしろ少し静かで、少し切なくて、でも後味は悪くない。世界の謎に手をかけていく感覚が、絶望よりも好奇心へ寄っているからだ。
そして、このテーマは他の作品にも繋がりやすい。
不条理空間にどう適応するか。バグみたいな綻びをどう読むか。怖さと面白さが同居する感じ。こういう要素が好きなら、短巻数の異色作や、夢っぽい世界の漫画もかなり合うと思う。『百万畳ラビリンス』は、その入口としてとても優秀だ。
この作品が刺さる理由3つ
- 夢みたいな怖さと、攻略のワクワクが同時にある
ただ怖いだけの迷宮ではなく、「次の扉の先に何があるのか」を知りたくなる。嫌なのに気になる。この感じがかなり強い。怖い空間ものが好きな人にも、探索系が好きな人にも届きやすい。
- ゲーム好きほど礼香の思考が気持ちいい
壁抜け、ループ、フラグ、綻び。礼香の見方がわかると、一気に面白さが増す。バグを悪いものとしてだけ見るのではなく、攻略の入口として見る感覚がある人にはかなり合う。こういうタイプの漫画が好きなら、他の“世界のルールを読む系”作品もたぶん好きだと思う。
- 全2巻でちゃんと終わる
短い。だから読みやすい。しかも、その短さの中で世界観の不気味さも、謎解きの面白さも、余韻まできちんと残る。長編がしんどい時でも入りやすく、そこから他の短巻数漫画へ広がりやすいのも強い。
向き不向き
合わない人
- 派手な展開や大きな感情の爆発を最優先で求める人
- 怖さは怖さとして、ゲームっぽい攻略感と混ざるのが苦手な人
- 設定の検証やルール探しそのものにあまり面白さを感じない人
刺さる人
- こういう夢を見たことがある人
- バグや裏ワザの話になると少しテンションが上がる人
- 不思議な空間もの、迷宮もの、ループものが好きな人
- 全2巻くらいで濃い異色作を探している人
- 次に読む漫画も「ちょっと変で面白いもの」を掘りたい人
まとめ
『百万畳ラビリンス』は、静かな漫画だと思う。
でも、その静けさの中にずっと引力がある。畳、廊下、階段、青空。どれも見慣れているはずなのに、少しずつおかしい。その違和感が、怖さにも、面白さにも変わっていく。
そして、この漫画のいちばんいいところは、バグを悪いものとしてだけ見ないところだ。
綻びがあるから怖い。でも、綻びがあるから試したくもなる。もしかしたら今の世界も、見えていないだけで少し壊れているのかもしれない。そんな想像まで連れていく。この感覚がかなり好きだ。
全2巻なので、すぐ読める。
けれど、軽くはない。読み終えたあとに、夢の中の変な建物みたいに少し残る。
しかも、この漫画が好きなら次に探したくなるものもかなりはっきりしている。迷宮もの。ループもの。夢っぽい不条理空間。ゲーム的な攻略で世界を解く話。つまり、『百万畳ラビリンス』は単体で面白いだけでなく、次に読む作品の好みまで見えてくる漫画でもある。
だから入口としてかなりいい。
怖いのに、少しわくわくする。
不条理なのに、試したくなる。
こういう感覚が好きなら、この一本で終わらず、たぶん他の異色作もかなり楽しめる。
その最初の一冊として、『百万畳ラビリンス』はかなりおすすめだ。
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