【MAO】漫画はどんな話?ネタバレなし|事故の日から人生ごと呪いに巻き込まれる怪異漫画
高橋留美子作品と聞くと、どうしても会話の軽さやキャラ同士のテンポを先に思い出す人が多いと思う。
『MAO』にも読みやすさはある。ただ、この作品が前に出してくるのは楽しさより違和感だ。家族を失った事故から生き残った少女が、何年も後になって、あの日の場所からまた別の世界へ引きずり込まれる。入口からして、もう少し嫌だ。
しかも『MAO』は、怪異が突然日常を壊す話というより、最初から日常の下に怪異が沈んでいた話として始まる。事故は終わった出来事ではなく、まだ続いていたものとして戻ってくる。だからこの漫画の怖さは、化け物が出ることより、「自分が助かった理由が最初からおかしかったのではないか」と分かっていくところにある。
読んでいて引っかかるのは、派手さより気味の悪さだ。
大正時代の空気、猫鬼の呪い、摩緒の執念、菜花の違和感。その全部が少しずつつながっていく。明るくはないし、気持ちよく全部を説明してくれる作品でもない。けれど、そのわりに読む手は止まりにくい。呪いの正体を追っているうちに、主人公の人生そのものが最初から巻き込まれていたと見えてくるからだ。
【MAO】はどんな話?ネタバレなしあらすじ
黄葉菜花は、中学三年生の少女だ。
けれど、彼女の人生には最初からひとつ大きな傷がある。幼い頃、家族全員が商店街の事故に巻き込まれ、自分だけが生き残った。その出来事は過去になったはずなのに、事故現場を再び通ったことで、菜花は大正時代へ迷い込む。そこで出会うのが、怪異を斬る陰陽師の青年・摩緒だ。
摩緒はただの協力者ではない。
彼自身も猫鬼の呪いを受けていて、長い時間を生きながら、その元凶を追っている。菜花が事故で生き残ったこと、摩緒が呪いを負っていること、この二つが偶然ではなさそうだと見えた時点で、『MAO』はただの怪異退治ものではなくなる。菜花は、自分の過去を追えば追うほど、今まで知らなかった自分の異常さとも向き合うことになる。
物語は、怪異を一つずつ解いていく形を取りながら、ずっと猫鬼の影を引きずって進む。
なぜ菜花は助かったのか。事故の日に何が起きたのか。摩緒は何を背負って生きているのか。御降家で何があったのか。怪異の事件ごとに小さく前へ進みながら、根っこの部分ではもっと大きな因縁が動いている。
一文で言えば『MAO』は、事故で家族を失い、自分だけが生き残った少女が、大正時代で出会った陰陽師と共に、猫鬼の呪いと自分の過去の真相を追っていく怪異ミステリーだ。
怪異そのものより、「自分が何に巻き込まれていたのか」が少しずつ見えてくるのが怖い漫画である。
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基本情報
- 作者:高橋留美子
- 掲載誌:週刊少年サンデー
- 巻数:既刊28巻
- 完結状況:連載中
- アニメ化:あり
連載中の作品ではあるが、入口はつかみやすい。
菜花が事故現場から大正へ迷い込み、摩緒と出会うまでが早いので、最初の段階で「この漫画は何を軸に読む話か」が見えやすい。猫鬼の呪いという大きな謎も早めに置かれるため、序盤から先を追う理由がはっきりしている。
絵については、今の漫画に慣れていると少し古さを感じる人はいると思う。
線の感触や顔の作りに、今っぽい尖った洗練とは違う時代感がある。ただ、そこが大きな弱点にはなりにくい。読んでいるうちに気になるのは絵柄より、次に何が分かるのか、摩緒が何を知っているのか、菜花の事故がどこまでつながっているのかの方になる。最初に少し引っかかっても、そのまま一気に読まされやすい作品だ。
作品の構造
世界観
『MAO』の舞台は大正時代だが、単に和風で怪しい雰囲気を出すための背景にはなっていない。
この時代だからこそ、古い呪術や怪異がまだ生活のすぐ隣にあるように見える。道や家や服装の空気がちゃんと湿っていて、怪異が出ても浮かない。現代から突然ファンタジーへ飛ぶのではなく、昔の現実の中へ嫌なものが混ざっているように見える。
ここで効いているのが、菜花がそこへ憧れで入るわけではないことだ。
事故の続きを踏まされる形で、大正時代へ滑り込む。だからタイムスリップの面白さより、戻れなさの方が先に来る。現代と大正が別世界に見えず、事故を境にそのままつながっているように感じる。この地続きの気味悪さが、『MAO』の世界観をただの時代ものにしていない。
物語システム
『MAO』は、一話ごとに怪異が出てきて、それを追う形で進む。
ただ、その場の事件を解けばすっきり終わる漫画ではない。毎回の怪異が、猫鬼や御降家の因縁、菜花の事故、摩緒の過去と少しずつつながっている。だから事件が終わるたびに話が閉じるのではなく、逆に「まだ奥がある」と見えてくる。
この進み方がうまい。
怪異の話を読んでいるつもりなのに、気になってくるのは人間関係の方だったりする。誰が何を隠しているのか。誰がどこまで呪いに食い込んでいるのか。怪異の正体を知ることが、そのまま人物の過去を掘ることにもなっている。だから先を読みたくなる理由が、毎回ちゃんと残る。
作品テーマ
『MAO』の芯にあるのは、「生き残ったこと」が救いではなく、不吉な始まりだったかもしれないという感覚だと思う。
菜花は事故の生き残りだ。普通なら、そこから立ち直る話にもできる。けれどこの漫画は、その“助かった”という一点をそのまま不安に変える。なぜ自分だけが生きたのか。その答えを探し始めた時点で、菜花の人生は怪異から切り離せなくなる。
摩緒の存在もそこに重なる。
彼は怪異を斬る側の人間だが、同時に呪いを抱えたまま生きている。つまり『MAO』は、怪異に襲われる人を助ける話ではなく、すでに呪いの中にいる者同士が、もっと大きな呪いの中心を探っていく話になっている。この構図があるから、二人の並びにも独特の重さが出る。ただ一緒に行動する男女ではなく、過去ごと縛られた二人に見える。
この作品が刺さる理由3つ
-
事故の日が、物語の最初から最後までちゃんと重い
菜花の過去は、悲しい設定として置かれているだけではない。話が進むほど、あの事故そのものが怪異の輪の中心に近づいていく。昔の不幸を思い出す話ではなく、「あの日がまだ終わっていなかった」と分かっていく話なので、引きが強い。
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怪異より先に、人の執着が気持ち悪い
この作品には当然怪異が出る。けれど、読んでいて嫌なのは怪物の見た目より、そこに絡む人間の執着だったりする。昔の恨み、禁術への欲、手放せない感情。怪異退治の漫画なのに、だんだん「人の方が嫌だな」となっていく。その感覚が残る。
-
摩緒が静かなまま、ずっと重い
派手に感情を出す主人公ではないし、陽気に引っ張るタイプでもない。なのに妙に気になる。菜花との距離の取り方も、怪異への向き合い方も、全部が少しずつ執念に寄っている。この静かな重さが作品の空気を支えている。
向き不向き
合わない人
- 高橋留美子作品に明るいコメディを強く求める人
- 怪異ものでも、毎回すっきり終わる読み味を求める人
- 気持ちよく勝って終わる展開を続けて読みたい人
刺さる人
- 怪異、呪い、陰陽師といった題材に惹かれる人
- 大きな謎を少しずつ追うミステリー寄りの作品が好きな人
- 執着や不老のような、長く残る因縁の話に弱い人
- 静かなのに妙に気になる男キャラが好きな人
まとめ
『MAO』は、怪異漫画として読める。
でも、それだけでまとめると少し足りない。読んでいて残るのは、「菜花が事故で家族を失った」ではなく、「菜花が事故の日からずっと呪いの線の上にいたのではないか」という不安の方だ。そこがこの作品のいちばん嫌で、いちばん続きが気になるところだと思う。
正直、絵は今の感覚だと少し古く見える瞬間がある。
そこはある。けれど、その引っかかりを押し流すだけの力もある。事故、猫鬼、御降家、摩緒の過去、その全部が少しずつつながっていくので、「絵柄がどうか」より「次に何が分かるのか」の方が前に出る。気づくと巻数が進んでいるタイプの漫画だ。
『MAO』は、読後に爽快感だけを残す作品ではない。
少し嫌なものが残る。路地、商店街、昔の家、そういう場所の見え方が少し変わる。事故の日から人生ごと呪いに巻き込まれる、というタイトルの通り、主人公の違和感がそのまま作品の読み味になっている。そこに引っかかる人なら、一気に読んでしまうはずだ。
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