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【氷の城壁】漫画はどんな話?ネタバレなし|人に近づかれるだけで心が削れる青春漫画

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【氷の城壁】漫画はどんな話?ネタバレなし|人に近づかれるだけで心が削れる青春漫画

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教室で少し浮くとか、返事の温度を間違えるとか、仲良くなりたいのに一歩目でこけるとか、そのへんの失敗は高校生の話にありがちだ。
ただ『氷の城壁』の小雪を見ていると、ありがちの一言で済ませるのが急に乱暴になる。話しかけられて困る、で終わらない。近づかれた時点で、もう内側のどこかが擦れている。相手に悪気があるわけではないのに、視線や声や距離の詰め方そのものがしんどい。そこを、かわいそうなヒロインの設定として置かず、体の反応みたいに描くので、最初から少し逃げにくい。

 

しかも、小雪ひとりの話にしてくれない。
ミナトは明るくて、空気に入るのがうまそうに見えるのに、自分の置き方は驚くほど雑だ。美姫は輪の真ん中へ立てるタイプに見えて、その立ち位置を保つためにかなり無理をしている。陽太はやさしいし、人懐っこいが、相手の壁の形を読むのはうまくない。四人とも、遠くから見ると普通なのに、近くへ寄ると全員ちゃんと面倒くさい。その面倒くささが、恋の飾りではなく本体として前へ出てくる。

 

だから『氷の城壁』は、青春をきれいに眺める話ではなく、高校生のころの散文みたいな感情を、もう一度その場の空気ごと持ってくる話になる。
帰り道で少し喋っただけなのに、夜になってからひとりで反省会が始まる。あの返しは冷たかったか、あそこでもう一言言えたか、今さら送るのも変か。そういう細かい削れ方を、雑に流さない。読んでいると、恋愛漫画を読んでいるはずなのに、昔の自分の対人の失敗まで一緒に戻ってくる。


作品はどんな話?ネタバレなしあらすじ

氷川小雪は、人と接するのが苦手で、高校でも誰ともつるまず一人で過ごしている。そこへ、なぜかぐいぐい距離を詰めてくる雨宮ミナトが現れる。さらに、学校の人気者である安曇美姫、のんびり優しい雰囲気の陽太も絡み、四人の関係が少しずつこじれていく。集英社の1巻紹介でも、小雪、ミナト、美姫、陽太の四人を軸にした「もどかしい青春混線ストーリー」と案内されている。

 

小雪は、誰かに嫌われたいわけではない。
ただ、近づかれると身構えるし、うまく返せないし、その結果また変な空気になる。そんなふうに、人との距離をずっと失敗しながら学校へ通っている。そこへ入ってくるのがミナトだ。こういう男は、別の漫画なら壁を壊してくれる側に置かれやすい。けれど小雪にとっては、助けになる前にまずしんどさへ触ってくる。悪気がないから余計にきつい。ここで、ただの出会いの話では済まなくなる。

 

さらに美姫と陽太が混ざると、四人の関係は「誰が誰を好きか」だけでは追いきれなくなる。
美姫は明るく振る舞うぶん、自分がどこで見られているかに敏感だし、陽太は人の気持ちに鈍いというより、自分のまっすぐさで押してしまう。中盤までは、恋が大きく動くというより、それぞれの人間性がひたすらほどかれていく。自分をどう見せているか、自分では何が怖いのか、誰に何を期待してしまうのか。その自己分析みたいな時間が、驚くほど丁寧に続く。だから終盤で恋愛の線が一気に濃くなったとき、唐突に見えない。ずっと水面下で擦れていたものが、そこでようやく形になるだけだ。

 

形だけ言えば、高校生四人の恋と友情の話になる。
けれど実際に残るのは、告白の瞬間そのものより、その前に黙った時間とか、笑ってごまかしたあとで一人になってから来るしんどさのほうだ。大きな事件は起きない。けれど、その代わりに小さな言い損ねが何度も積もる。全14巻完結なので、その積もり方が最後にどう返ってくるかまで止まらず追える。最終14巻は2025年2月4日発売で、集英社の紹介では小雪とミナト、美姫と陽太、それぞれが新しい季節へ向かう完結巻として案内されている。

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基本情報

  • 作者:阿賀沢紅茶
  • 出版社:集英社
  • 巻数:全14巻
  • 形式:単行本版フルカラー
  • 状態:完結済み
  • 原作連載:マンガMee
  • TVアニメ化:発表済み

1巻は2023年7月4日発売、最終14巻は2025年2月4日発売。デジタル版はフルカラー単行本として案内されている。TVアニメ化は2025年1月末に発表され、2026年春放送の案内も出ている。


作品の構造

四人の距離の動き

小雪は、無口な子という一言では止まらない。
人に近づかれるのが苦手、で済ませるとたぶん足りない。近づかれた時点で、自分の領域の内側へ土足で入られたみたいに削れる。しかも、それをうまく説明できない。だから相手から見ると冷たい。小雪から見ると、ただ守っているだけなのに、外からは拒絶に見える。この噛み合わなさが最初からずっとある。

 

ミナトみたいに距離の詰め方が速い人間は、ほかの青春漫画なら壁を壊してくれる役に回りやすい。
けれど小雪にとっては、助けになる前にまず傷のほうへ触ってくる。近づいてくれることと、近づかれるしんどさが同じ場面に並ぶので、空気が軽くならない。しかも視線は小雪だけに固定されない。美姫には美姫の苦しさがあり、陽太には陽太の鈍さがある。誰か一人を悪者にして片づけないまま、四人の距離だけがじわじわ狂っていく。ここが『氷の城壁』のいやなところで、同時に読ませるところでもある。

 

 

モノローグの痛さ

この漫画は、口に出した台詞より、その場で飲み込んだほうをずっと追いかけている。
返事が遅れる。笑って合わせる。帰ってから別のことを考える。教室で言えなかった一言が、夜になってから急に刺さる。そういう流れが細かく積み上がる。すれ違って切ない、で済むならもっと読みやすい。実際は、その場にいたくない感じのほうが先に来る。人間関係の嫌な思い出が多い人ほど、このへんでだいぶ削られる。

 

一回「この子はこういう子だな」と思っても、次の場面ですぐ崩れるのも大きい。
小雪が黙るときも、ただ黙っているのではなく、頭の中ではちゃんと反応している。ミナトが愛想よくしているときも、本当に余裕があるわけではない。美姫の明るさも、陽太の気楽さも、そのまま表面の印象で置かない。だから読む側も、人物の見え方を何度も変えさせられる。中盤の「まだ大きく恋が動いていない時間」が面白いのは、この見え方の更新がずっと続くからだ。

 

 

恋愛より先に、自分の置き方の話になる

好きかどうかだけ追っていると、途中で足りなくなる。
小雪が人とどう並ぶのか。ミナトがどう振る舞えば自分を空にしすぎずに済むのか。美姫が誰かに好かれることと自分の価値をどう切り離すのか。陽太が相手の壁をどう知るのか。そちらのほうが先に来るからだ。

 

だから、読んでいると恋愛を追体験しているというより、高校生のころの心の置き場をもう一度なぞらされる感じが強い。
誰かに見られている気がして落ち着かないとか、返事ひとつで自分の価値が揺れるとか、少し近づいただけで急に怖くなるとか、そのへんの散文みたいな感情をかなり丁寧に拾う。終盤で恋愛描写がぐっと増えるのも、その土台があるからこそ効く。


この作品が刺さる理由3つ

  • 小雪のしんどさが、説明される前に先に来る
    「人付き合いが苦手なんだね」で片づけようとすると、小雪の反応のほうがそれを拒む。近づかれるだけで削れる感じが、比喩ではなく体の反応として出るので、似た感覚を知っている人にはかなり刺さる。

 

  • 四人とも、近くで見るとちゃんとしんどい
    小雪だけを守れば済む形にしないし、ミナトを置けば全部うまく回るわけでもない。美姫には美姫の苦しさがあり、陽太には陽太の鈍さがある。そのせいで、誰か一人へ気持ちよく肩入れしたまま読ませてくれない。群像劇としての厚みはここから出る。

 

  • 中盤の自己分析の積み重ねが、終盤の恋愛を効かせる
    途中から恋愛描写は増える。けれど、それまでの巻で各キャラの人間性がかなり丁寧にほどかれているので、急に甘い話へ寄った感じにならない。言えなかったこと、勘違いしたこと、気づいてしまったこと、その積み重ねの先に恋があるから、終盤の動きが軽く見えない。

向き不向き

合わない人

  • テンポのいいラブコメを読みたい人
  • 心理描写やモノローグが多いと重く感じる人
  • 誰が悪いか、誰が正しいかをはっきりさせたい人
  • 気まずい会話や、教室の空気が冷える場面を見るのが苦手な人
  • 青春漫画には爽快感を優先したい人

刺さる人

  • 人に近づかれるだけで消耗する感覚を知っている人
  • 自分の気持ちを言葉にする前に、いつもタイミングを逃してしまう人
  • 恋愛より先に、人としてどう並ぶかの話を読みたい人
  • 登場人物の誰か一人ではなく、全員に少しずつ心当たりがある人
  • 完結済みで、感情の積み上がりを一気に浴びたい人


まとめ

小雪は、静かにしていれば誰にもぶつからずに済むはずだった。
けれど、ミナトが入ってくると、その静けさがすぐ崩れる。悪意のある相手に傷つけられる話なら、もっと単純だったと思う。実際はそうではない。明るく話しかけられて、うまく返せなくて、帰ったあとで勝手に消耗している。『氷の城壁』がしんどいのは、そういう「大したことじゃない顔をした出来事」でちゃんと人が削れていくところ。

 

誰か一人だけ見ていれば済む話でもない。
美姫は輪の真ん中にいるまま苦しくなっていくし、陽太は悪気なく人の境界へ手をかける。ミナトも、器用そうに見えて雑だ。だから教室の空気がずっと少しだけずれている。大事件ではないのに居心地が悪い。

 

読み終わったあとに残るのも、きれいな告白の場面だけではないはず。
返事を打ちかけたまま閉じた画面とか、言い返せなかった会話とか、笑ってごまかしたあとで急に恥ずかしくなる時間とか、そういう細かいものがまとめて残る。『氷の城壁』は、恋の話をしながら、教室の中で息をするだけで妙に疲れていた頃まで一緒に連れてきます。たぶんこの漫画、そこがいちばん記憶に残る。

 

 

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