【BLACK TORCH】漫画はどんな話?ネタバレなし|チェンソーマン?死んだと思ったら黒猫が心臓になる忍者漫画
森で拾った黒猫を抱えたまま走った少年が、次の瞬間には胸を貫かれて死に、そのまた次の瞬間には、その黒猫を心臓代わりにして立ち上がる。
『BLACK TORCH』は、この始まりだけでもう十分に変だ。忍者の末裔と伝説級の物ノ怪がひとつの体へ押し込まれる。設定だけ抜き出せば派手だが、実際にページを開くと、まず効いてくるのは派手さより速さのほうだった。踏み込む、斬る、影が伸びる、その順番が説明より先に目へ入ってくる。
このタイトルを見て、「ああ、死んだ少年の中に異形が入るやつね」と想像する人もいると思う。
たしかに入口だけ取れば、そういう並びの漫画を思い出しやすい。が、『BLACK TORCH』はもっと乾いている。荒れて騒ぐ感じではなく、黒い刃が一枚増えたみたいに画面が締まる。我妻 弐郎(あづま じろう)は喧嘩っ早いし、黒猫の羅睺(ラゴウ)は人間嫌いだ。最初から気持ちよく息の合う相棒ではない。その噛み合わなさを抱えたまま戦うので、見た目の派手さだけで流れにくい。
しかも、設定が王道寄りなのも悪くない。
忍者の血筋があって、怪物との融合があって、秘密組織がいて、そこへ新人が放り込まれる。並べると「どこかで見たことがある」と思う人はいるはずだ。実際、奇抜さ一点で殴ってくるタイプではない。だが、そのぶん入口で変に迷いにくい。足場は王道寄り、そのうえで絵とスピードで前へ持っていく。そこが『BLACK TORCH』の読みやすさになっている。
【BLACK TORCH】はどんな話?ネタバレなしあらすじ
弐郎は、祖父に鍛えられて育った忍者の末裔で、動物と会話できる少し変わった力を持つ高校生だ。
人間相手には喧嘩っ早いが、傷ついた犬猫を見れば放っておけない。その性分のまま森で拾った黒猫が、物語の全部をひっくり返す。黒猫の正体は、伝説の物ノ怪・羅睺。追手に襲われた羅睺を守ろうとして、弐郎は胸を貫かれる。普通ならそこまでだ。胸をやられて終わる。ところが、この漫画はそこで終わらせず、その黒猫を心臓の代わりにして弐郎を立ち上がらせる。集英社の作品情報でも、作者はタカキツヨシ、作品は全5巻完結の『BLACK TORCH』として案内されている。
蘇った弐郎の前に現れるのが、物ノ怪を追う側の組織《黒の灯火(ブラックトーチ)》だ。
忍者の血を引く人間たちが、現代の裏側で妖とやり合っている。そこへ、伝説級の物ノ怪を胸に飼ったままの新人が入ってくる。周りからすると、だいぶ面倒だ。本人にその気がなくても、危ないものを内側に入れてしまっている。だから、ようこそ新人、ここで一息、みたいな時間があまり来ない。周囲とぶつかり、力も扱えず、そのくせ現場には出る。その足元がまだ固まらないうちに、話のほうが次の衝突を連れてくる。
なので、筋だけ言えば「忍者の末裔が黒猫の物ノ怪と融合して、秘密組織で戦う話」になる。
ただ、実際にページを開くと、忍者バトルだけで終わらない。弐郎と羅睺は最初から気持ちよく仲良くしてくれないし、同じ体を使っているくせに、考え方の噛み合いも悪い。その悪さを抱えたまま前へ出るので、ただ「強くなって敵を倒す」だけの話には見えにくい。
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基本情報
- 作者:タカキツヨシ
- 出版社:集英社
- 掲載:ジャンプSQ.、少年ジャンプ+
- 巻数:全5巻
- 1巻:紙版2017年4月4日、デジタル版2017年4月18日発売
- 5巻:2018年8月3日発売
- 状態:完結済み
- TVアニメ:2026年7月6日より放送開始予定
作品の構造
現代の街に、忍者と妖怪をそのまま置く
スマホもあるし、地下施設もある。
その横で刀が抜かれ、昔の忍びの血を引く連中が物ノ怪を追う。組み合わせだけ見れば、少し盛りすぎにも見える。だが、『BLACK TORCH』ではそこが妙にすんなり入る。現代のコンクリートの冷たさと、怪異譚の湿り気が、同じ画面の中でちゃんと並ぶからだ。街中で戦っていても、足運びだけは昔の忍びのまま、みたいな見え方が崩れない。
設定はある。
組織の役割も、敵味方の立場も、言おうと思えば整理できる。が、この漫画はそこを先に棚へ並べて説明するより、まず弐郎と羅睺を走らせる。読んでいる側が「なるほど、こういう仕組みか」と追いつく前に、先に場面が一段進んでいる。そこが、少し初連載っぽい危うさにも見えるし、そのぶん勢いにもなっている。
バトルは速い。しかも構図で押す
『BLACK TORCH』を読んでいて気持ちいいのは、戦闘シーンの速さだ。
人が飛ぶ。影が食う。斬る。避ける。その流れが速いのに、誰がどこへ入ったのかは見失いにくい。ごちゃごちゃした能力の説明で押すのではなく、足の入り方や影の伸び方で見せるので、静止画なのに地面を蹴る感触のほうが先に来る。
絵柄や構図も、好きな人にはかなり刺さると思う。
いろいろな作品の影響を受けている感じはある。だが、ただ似ているで終わらず、バトルのコマでちゃんと自分の勢いに変えている。線が多いのに止まらず、構図も「見せたいものをちゃんと見せる」ほうへ切ってくる。そのへんは、絵が好きな人ほど分かりやすいと思う。
まだ荒い。しかし、その荒さが死んでいない
正直に言うと、めちゃくちゃ緻密に積み上げたタイプの完成度ではない。
設定が王道寄りなので、人によっては「見たことがある」と思う部分もあるだろうし、戦いの決着やキャラの転がし方に、少し若さを感じるところもある。もう少し話の密度がほしい、もう一段階ためてから爆発してほしい、と思う人もいるはずだ。
ただ、その荒さが嫌な鈍さになっていない。
「まだ荒いな」で止まるのではなく、「この作者、もっと上手くなったらかなり化けそうだな」という方向へ読後感が向く。実際、絵はかなり強い。構図も取れる。スピードもある。なので、完成されきった整い方ではなく、前のめりに走る勢いそのものが好きな人には、そのまま魅力になりやすい。
この作品が刺さる理由3つ
- 黒猫がそのまま心臓になる入口が強い
忍者の末裔が、助けようとした黒猫の物ノ怪と融合して蘇る。この始まりだけで、試し読みの先へ行く理由はかなりできる。
- バトルの見え方が速くて気持ちいい
コマの切り替わりは速い。だが、踏み込みと影の入り方がちゃんと追えるので、勢いだけで置いていかれにくい。
- 王道寄りだからこそ入りやすい
奇をてらった設定一点突破ではなく、忍者、妖怪、融合、秘密組織という分かりやすい軸がある。そのうえで画面の勢いが乗るので、入口で迷いにくい。
向き不向き
合わない人
- 忍者ものに、もっと泥くさく古風な「忍び」の空気を求める人
- 緻密に積み上げた設定や重たいドラマを最優先で読みたい人
- 王道寄りの異能バトルを見ると既視感が先に立つ人
- 動物、とくに黒猫が傷つく導入がかなりしんどい人
刺さる人
- 『チェンソーマン』の「異形との融合」という入口に惹かれた人
- 現代劇と忍者と妖怪が混ざった、乾いた画面が好きな人
- とにかくバトルの構図やスピード感を浴びたい人
- まだ粗いところも含めて、前へ出る勢いのある漫画が好きな人
まとめ
黒猫を守ろうとして死に、その黒猫を心臓代わりにして立ち上がる。
この始まりの時点で、もう話はだいぶ強引だ。だが、『BLACK TORCH』はその強引さを説明で整えず、そのまま弐郎を走らせる。忍者の末裔が、正体の知れない黒猫と同じ体で戦う。設定だけなら派手だが、読んでいると派手さより、足の運びと影の入り方のほうが目に残る。
しかも弐郎と羅睺は、最後まで気持ちよく噛み合わない。
仲良しのバディになると見せかけて、そこまで都合よく揃ってくれないので、戦うたびに少しざらつく。そのざらつきが消えないまま、秘密組織の仕事や物ノ怪側の因縁まで前へ出てくる。順番にきれいに面倒が来るのではなく、「はい次、はい次」で衝突が増えていく感じがある。
なので『BLACK TORCH』は、完成されきった名作というより、線と構図と速度で前へ押してくる漫画として読むほうが気持ちいい。
読み終わったあとで先に残るのも、細かい設定より、黒い影の走り方や、弐郎の踏み込みの速さのほうだと思う。最初の融合の場面で引っかかったなら、そのまま最後まで連れていかれるはずだ。
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